コロナウイルスの感染拡大で飲食店の多くが通常営業を取りやめざるを得ない中、様々な工夫や取り組みで困難を乗り越えようとする動きもある。とりわけテイクアウトのサービスに注力する飲食店は多く、今回のコロナ禍をきっかけに、食事のお持ち帰りや宅配の習慣は、各家庭に定着しつつある。
伊丹市内の「伊丹酒蔵通り」は、JR伊丹駅から西へ約350㍍続く商店街。4月8日から期間限定で、通りの名前を「伊丹お持ち帰りストリート」に変更した。20軒近い飲食店が集まり、街ぐるみでテイクアウトに力を入れていることを発信している。
発案者は伊丹酒蔵通り協議会の会長、山岸直人さん。自身も奄美料理店「奄んちゅ」を経営する。改名の理由について「遊び半分です」と笑いつつも、「普通にやるよりも、通りの名前を変えるくらいのインパクトで注目を集めたかった」と力を込める。
石畳が敷かれ、夜は行灯風のまちあかりがともる瀟洒(しょうしゃ)な商店街も、その利用者の多くはやはり地元民。駅へと続く道でもある商店街の人通りの数は、コロナ前もコロナ後も「それほど変わらない」と山岸さんは感じる。しかし夜の入店数は激減。4月上旬からは通常営業を取りやめ、昼夜のテイクアウトと看板料理である「黄金の角煮」の通信販売に切り替えた。店の売り上げは減少したが、通常営業をしていた夜には出会えなかった、新たな客層との接点が持てていると感じる。なじみ客の中には、通りに並ぶ各店のテイクアウト料理を「はしご」し、両手いっぱいに袋を持って来てくれる人もいるという。
支えられている地元に少しでも恩返しがしたいと、5月5日「こどもの日」には、山岸さんを含む飲食店3人の店主が、ひとり親家庭を対象に無償で食事を提供する。取り組むのは「奄んちゅ」ほか、居酒屋「ほこ」、「カフェダイニング メロウ」の3店。「奄んちゅ」では、海鮮素材ほかのりやシャリ、一品料理もついた手巻きずしのセットを。「ほこ」では、刺身や肉などが入った「ぜいたく弁当」、「カフェダイニング メロウ」ではハンバーガーまたはタコライスを用意する。「休校が続き、ひとり親だと1日3食の準備はさらに大変だと思う。1食だけでもプロの料理を楽しんでもらい、負担を少しでも軽減できれば」と思いを込める。
感染拡大は続き、店もまだまだ先が見通せない。長期戦も覚悟している。しかし立ち寄る客からは「外に食べに行けないから、テイクアウトサービスはありがたい」「頑張って」と声を掛けられることもある。「逆に励まされている感じ。地道にファンを増やし、収束後の通常営業に来ていただければと頑張っています」と山岸さんは話す。
食事提供の希望者は事前に各店に電話で申し込み。
5月4日19時締め切り。各店20食限定で先着順。 複数店での申し込みは不可。 ・「奄んちゅ」 TEL072・786・1611 ・「ほこ」 TEL072・775・2918 ・「カフェダイニング メロウ」 TEL072・777・5200 |